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超高強度鋼板の遅れ破壊

【背景】

 自動者の車体に適用される超高強度鋼板は、高いプレス成形性が要求されるが、開発途中に明らかになった遅れ破壊特性が大きな課題となった。

 

【超高強度鋼板とは】

アメリカでドア補強材に使用された、引張強さが1000MPa以上の鋼板を超高強度鋼板と呼ばれるようになった。

日本ではバンパー補強材、ドア補強部材に使用したいとの要望から、開発がすすめられた。

 

【成形性の改善】

型を作製してプレス実験をしたところ、曲げ部での割れが多く発生した。

割れた部分の断面を観察すると、鋳造段階での成分偏析に起因する硬質な組織と軟質な組織の境界で割れていることが分かった。この組織の差を改善するべく、組織の均一化が進められた。

また研究では、全伸びと最小曲げ半径は相関がなく、均一性指数と曲げ性は相関があることが分かった。

最終的に1180MPa超高強度鋼板の組織として、ベイナイト単相の均一な組織を選択し、製造プロセスを完成させることができた。   

 

【遅れ破壊】

自動車メーカーで鋼板を適用する検討を始め、プレス成形、溶接までは順調に進んでいた。

しかし耐食性試験の途中でサンプルが割れてしまう。

過去にオーステナイト系ステンレス鋼で遅れ破壊の1種である置き割れという現象があり、それは加工誘起変態によりマルテンサイトに変態した相が影響しているとの報告であった。

研究により残留オーステナイト、加工ひずみ、残留応力の影響を調べ始めたところ、安全な限界の残留オーステナイト量を5%以下と整理することができた。

 

【私の感想】

専門外なので、想像の話となりますが、金属に遅れ破壊があるのは、成形することで、部材内部に応力が残っており、組織が時間や外部要因により変異していくことで、その応力に耐えられなくなる現象とイメージしました。

コンクリートは製造後の成形を行うことがないが、繰返し荷重によりよって疲労破壊が生じるように、過去のストレスは蓄積されるのと同じようなイメージとも取れました。

コンクリートに加工性を持たせることはできないが、製造段階でどんな形にでも作れることは、コンクリートの優位性のように感じました。

 

(月刊技術士 1月号より)